【読書】君たちはどう生きるか

 

君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか

 

 

 

前置き 

ジブリの宮﨑駿が同名の映画を作るという話を聞いて*1、買って読んでみた。

 

概要

時代は昭和初期だろうか*2、旧制中学の1年生くらいの「コペル君」というアダ名の少年が、周りの環境の観察と相互作用、また叔父や母親*3との対話を通じて、立派な人間になるためにどう生きるか、を考え見出していく。

 

詳細

  1. へんな経験
    叔父のノートでは、自分を世界の中心として捉えるべきでないという「コペルニクス的」な見方が導入される
  2. 勇ましき友
    叔父のノートでは、自分自身の体験から来る感動や、自分自身の考えを重視することが説明される。ただ、それが「立派な人間」に繋がることは保証されないような気もしたが…
  3. ニュートンの林檎と粉ミルク
    林檎が落ちることを外挿して月のことを考えるのならば、遠心力と釣り合っているというよりは、『月も「落ちている」のだ』という考えの方が一貫しているのではないかと思う。
    叔父のノートでは、生産関係や経済学の話が導入され、そこから、既存の学問を上り詰めて新しい発見をすることの重要性が説かれる。これはなかなか良い。
    また最後に、「人間らしい人間関係」を持ちたいよね、と。
  4. 貧しき友
    叔父のノートでは、経済的に貧しいことに引け目を感じるな、また下に見るなということ、世の中には貧しい人が数限りなくいて且つそれに比べて恵まれている立場の人がいる、だからその立場を十二分に活かせということ、生産するものは消費するだけの人に比べて尊い*4ということ、が書かれる。
  5. ナポレオンと四人の少年
    水谷家がガチ金持ち。かつ子お姉さんはアツい人。
    叔父のノートでは、ナポレオン等の偉人は、人類の進歩の方向と同じ向きを向いた事業のみが偉大なのであり、その他の、スケールは大きいが人類の進歩に貢献しなかったものは実はそうでもない、という話がなされる。しかし、ナポレオンの意志の強さは、見習うべきである、とも。
  6. 雪の日の出来事
    フラグ回収的ではあるが、誰にでも起こりうることだとも思う。
  7. 石段の思い出
    お母さん優しい。
    後悔はしっかり反省して今後に活かすしかないし、自分に恥じないような行動を取れれば、自分に誇りが持てていく(かも)。
    叔父のノートでは、正常からのズレにより痛みを覚えるから正常がどのような状態かを知ることが出来る、また、痛みを覚えるのは、もっとやれたからと思っているからである、と説明される。なるほど。
  8. 凱旋
    友たち、気持ちの良い奴ら過ぎでしょ!
  9. 水仙の芽とガンダーラの仏像
    この章の記述は、正直、何が言いたいのか分からない。
  10. 春の朝

感想

「立派な人間」だとか「強さ」のような概念は無定義、無批判に出てくるものの、それ自体に目をつぶれば、教育的にはよく書けている気はする。

小中学生に読ませると良いかもだけれど、最近は使われない表現だとか、社会環境(身分→貧富の差のようなものが建前として無いというわけでないところ)とかは現代の大人でさえあまり分からないところかもしれない。

自分にとってはどうであったか。

人間関係においては強くかつ他者貢献的であること、自分の心に誇りを持てるような行動に自ら修正していくこと、あたりか。

これが出来ていた方が、仮に周りから帰ってこなかったとしても、幸せを感じられるかもしれない。

*1:と言ってもこの本を映画化するという話ではないようだ

*2:作者自体がリベラルだったせいか、作品時代に軍国主義的な雰囲気はほぼ感じられない

*3:父親は他界している

*4:これは現代では生産そのものというよりはクリエイティビティの観点から説明される気もする